南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

村上春樹「1Q84」BOOK 3

    

        村上春樹「1Q84」BOOK3について


 村上春樹「1Q84」BOOK3は、期待通りのできばえだった。

 詳しいことはまた別な機会に譲りたいと思うが、とりあえず気の付いたことを挙げておきたい。

1.ハリウッド映画を見るようなビジュアルな描写、ストーリーの展開、場面の設定、小道具の使い方など物語の作り方がたくみだ。

2.登場人物の描き方が漫画的な誇張がほどこされており具体的で特徴的でイメージを持ちやすい。

  (タマル、牛河、天吾の父、三人の看護婦など)

3.ストーリーの決着・解決の付け方がうまい。
 (天吾の父の死、母の死因と死亡時期、牛河の死など)

4.ファンタジーに傾きすぎずに、社会派リアリズムの線を守れたのは作者の意図が成功したといえる。

   (青豆の処女懐胎、リトルピープル、NHK集金人などはあるものの全体としてリアル)
    (1Q84から1984へ(あるいは第三の世界へ?)の移動の仕方が割と自然)

5.天吾と青豆の再会の成就、ハッピーエンドの展開が読者の期待に沿っている。

  (BOOK2で青豆が拳銃自殺を図ろうとしたが、思いとどまった)

6.全体として、きわめておもしろく、文章も巧みで、エンターテインメントとしての小説の魅力を存分に発揮している。

7.「1Q84」を読む限り、現在の日本人作家では村上春樹が傑出してるといえる。

 以上

 なお、参考までに、「1Q84」BOOK1とBOOK2についての感想は、次のとおりです。

http://blogs.yahoo.co.jp/nambara27/58707932.html