南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

57577系短詩

なぜ「57577系短詩」と言うのかと言えば、

1.5□7□5□7□7 のように各節の間は一字空ける。

2.現代的仮名遣いを基本とする。

3.現代語を基本とする。

ということを基本としているため、短歌とは一線を画していると考えているからです。

 

nambara14.exblog.jp

575系短詩

なぜ「575系短詩」という言い方をしているのかと言えば、

1.5□7□5というように、各節間を一字空けとしていること。

2.現代的仮名遣いを基本としていること。

3.現代語を基本としていること。

4.季語にこだわらないこと。

5.切れ字は基本的に用いないこと。

6.句末に「・・・かな」を基本的に用いないこと。

ということを基本としているので、「俳句」とは違う分類としたほうがよいと

考えたためです。

 

 

nambara14.exblog.jp

シェークスピア ソネット 93

ソネット 93

 

                                                 W.シェークスピア

 

ということで、わたしは不実を働かれた夫のように
あなたが真にわたしを愛していると思いながら暮らしていくのだろうか?
あなたが心変わりをしたとしてもわたしを愛する表情はいつまでも変わらないように見えるかもしれない
あなたがわたしに愛する眼差しを向けていても心はほかのひとに向けられているかもしれない、
なぜならあなたの顔にはわたしを嫌う色をうかがうことができないからだ
だからあなたの外見からはあなたの心変わりを知ることはできない
多くのひとびとの表情を見れば、偽りのこころは
怒りやしかめ面や奇妙な皺として現れる、
だがあなたが誕生したときに 天は
あなたの顔にはいつもやさしい愛の表情が浮かべられるように命じたのだ
あなたの考えあるいは思いがなんであろうとも
あなたの外見はそれとは別にやさしい表情を示す、
あなたの素晴らしい内面の美徳があなたの見た目に相応しないのであれば
あなたの美しさはいかにもイヴのりんごのような実を結ぶだろう!

 

Sonnet XCIII

 

W. Shakespeare

 

So shall I live, supposing thou art true,
Like a deceived husband; so love's face
May still seem love to me, though altered new;
Thy looks with me, thy heart in other place:
For there can live no hatred in thine eye,
Therefore in that I cannot know thy change.
In many's looks, the false heart's history
Is writ in moods, and frowns, and wrinkles strange.
But heaven in thy creation did decree
That in thy face sweet love should ever dwell;
Whate'er thy thoughts, or thy heart's workings be,
Thy looks should nothing thence, but sweetness tell.
How like Eve's apple doth thy beauty grow,
If thy sweet virtue answer not thy show!

 

梅雨入り(575系短詩)

 梅雨入り(575系短詩)

 

         南原充士


祈りへと 傾く気圧 雨期を押す

想像の 雨界を消して 空晴れる

嫌われて 梅雨前線 居座りぬ

陽炎の 見下ろす微視の 社会距離

自嘲気味 鏡に映る 雨の外

コロナ梅雨 見果てぬ夢の 濡れそぼる

濡れる身を 心奮いて 乾かせり

一日は 雨降りやまぬ ロ短調

梅雨の入り 滅入るそぶりを つゆ見せず

 

シェークスピア ソネット 92

 

ソネット 92


       W.シェークスピア


だがあなたはわたしを捨てるなどいうひどいことをするでしょうか
なぜなら生涯あなたはわたしのものであり
あなたの愛が終わればわたしの命も終わるからです
わたしの命はあなたの愛次第だからです、
だからわたしは最悪の事態を恐れる必要はないのです
ちょっとした事態さえわたしの命を終わらせるのですから
あなたの気分に左右される状況に比べれば
それはより恵まれた状況であるしょう、
わたしの命は今まさにあなたに裏切られた状態にあるのですから
あなたは心変わりによってわたしを悩ますことはできないのです
おお、わたしはなんという幸福な資格を見出したのでしょう
あなたに愛される幸福、あるいは死ぬという幸福
だがいかなる汚点をも恐れなくてもいいほど美しい祝福とは一体何でしょうか?
あなたは不実な行為をするかもしれませんが、わたしはそれに気づくことはないのです。

 

Sonnet XCII

       W. Shakespeare

But do thy worst to steal thyself away,
For term of life thou art assured mine;
And life no longer than thy love will stay,
For it depends upon that love of thine.
Then need I not to fear the worst of wrongs,
When in the least of them my life hath end.
I see a better state to me belongs
Than that which on thy humour doth depend:
Thou canst not vex me with inconstant mind,
Since that my life on thy revolt doth lie.
O what a happy title do I find,
Happy to have thy love, happy to die!
But what's so blessed-fair that fears no blot?
Thou mayst be false, and yet I know it not.

『梅雨入り近し』

   『梅雨入り近し』

 

        南原充士

 

表現は 悩み苦しみ 躓けど 辛抱強く 水脈を追う

表現は こんがらかった 細糸を 辛抱強く ほぐすに似たり

表現は ひとりこもりて 営めど 他者につながる ときを待ちわぶ

相対の 靄に浮かんで 絶対の 生身を生きる 割れたる柘榴

コロナ梅雨 早く過ぎゆけ 忍耐の マスクは苦し 巣ごもり辛し

コロナにて 気鬱のうちに 漏水の 気づかぬうちに 進行しており

調べれば 施工不良と 判明す 責任なけれど 動揺激し

なにごとも 不意に起こりて 追い詰める おまえはなにに 呻き苦しむ?

窮屈と 思えばそっぽ 向いたって 嫌いになった わけではないと

ゆるふわに つきあうことの ほどよさに 気づいてみれば ひとりほほえむ

だれかれに 一期一会と 気張らずに 時の流れに 任せて生きる

かわしたり 目くらましたり ひそんだり どうにもならぬ 秒読みの声

崖っぷちに ありても生きる 毎日は 相変わらずの 繰り返しのごと

異なるは 意外でもない ことなれど 心の奥を 見るは悲しき

通じ合う 事はできぬと あきらめて 疑似共感に 託す真実

なにゆえに わかりあえぬか ひととひと はかない命 認め合えども

暗闇に 光一筋 射しすぎる かすかな未来 感じ合うとき

ひっそりと 自ら思い 行うを 真率に述ぶ 危機にありても

あれこれと おもいわずらう だけじゃなく ひとつの歓喜 見つけてみたい

ドア越しに 顔を見るのも 五分間 受話器の声に 力が入る

施設から たまの面会 許されて 厳重武装で 玄関に入る

付き添いの 介護職員 黙々と ホイールチェアの 母を押し来る

表現について

表現は、

『表現したい』

『「表現できない」「表現すべきではない」「表現したくない」「表現を禁止されている」「表現技術が未熟である」「表現する価値に乏しい」「表現がだれかを傷つけるおそれがある」』

などのはざまにある。

 

自分としては、このような微妙な力学を踏まえて慎重に表現する姿勢を保っていたいと思う。