南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

シェークスピア ソネット 75

 

ソネット 75

 

      W. シェークスピア

 

あなたはわたしにとって生きる糧のようなもの
あるいは大地を潤す季節の慈雨のようなものだ
あなたの平穏を守るためにわたしは心を砕く
あたかも守銭奴がその富に意を用いるように、
今は満ち足りた者として誇らしい気持ちでいるが すぐさま
盗み癖のある同時代の者たちがその財宝を盗みはしないかと心配になる、
今はあなたとふたりだけでいることをこの上なく大切に思うが
後には人々がわたしの喜びを目にするかもしれないと思ってわくわくする
あるときあなたを見るという眼福で満たされたばかりでも
たちまちまたあなたと会いたくてたまらなくなる
すでに手に入れたものあるいはあなたから奪い取らなければならないもの以外
なんら愉楽を感じることも追求することもない
このようにわたしは日に日に飢えては飽食する
あるいはあらゆる財宝を貪るかさもなければ飢えに苦しむかだ。

 


Sonnet LXXV

 

      W. Shakespeare

 

So are you to my thoughts as food to life,
Or as sweet-season'd showers are to the ground;
And for the peace of you I hold such strife
As 'twixt a miser and his wealth is found.
Now proud as an enjoyer, and anon
Doubting the filching age will steal his treasure;
Now counting best to be with you alone,
Then better'd that the world may see my pleasure:
Sometime all full with feasting on your sight,
And by and by clean starved for a look;
Possessing or pursuing no delight
Save what is had, or must from you be took.
Thus do I pine and surfeit day by day,
Or gluttoning on all, or all away.