南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

シェークスピア ソネット 115

 

ソネット 115

 

        W. シェークスピア

 

これまでにわたしが書いてきた詩行は偽りです

わたしはこれ以上あなたを愛することはできませんと言ったことさえ、

当時のわたしの判断力では わたしのこれ以上ない愛の炎が

更に強まるなどと想像する理由など思い当たらなかったのです、

けれども 時が刻む夥しい出来事が

様々な誓いの中に忍び込み、王の布令を改め、

聖なる美しさを鞣し、最も固い意志を鈍らせ、

強固な心を変わりやすいものに変えてしまうのです、

ああ!時の圧政を恐れる余り、わたしは

「今わたしはあなたを最も愛しています」と言ってはいけないのでしょうか?

そのときわたしの愛は時よりも確かなものであり、わたしの愛は

現在に王冠をいただかせ、未来には疑問を呈するものであったのですから、

愛は赤ん坊です、それならわたしはそう言ってはいけないのでしょうか?

いつまでも育ち続けるものに完全な成長を遂げさせるために。

 

 

Sonnet CXV

 

        W. Shakespeare

 

Those lines that I before have writ do lie,

Even those that said I could not love you dearer:

Yet then my judgment knew no reason why

My most full flame should afterwards burn clearer.

But reckoning Time, whose million'd accidents

Creep in 'twixt vows, and change decrees of kings,

Tan sacred beauty, blunt the sharp'st intents,

Divert strong minds to the course of altering things;

Alas! why, fearing of Time's tyranny,

Might I not then say, 'Now I love you best,'

When I was certain o'er incertainty,

Crowning the present, doubting of the rest?

   Love is a babe, then might I not say so,

   To give full growth to that which still doth grow?