日経小説大賞の受賞作「テムズのあぶく」は、なかなかよく書けていると思う。
作者は、武谷牧子さん。ある程度実績はあるひとらしいが、ぼくははじめてその作品を読んだ。
綿矢りささんとか金原ひとみさんとか若い才能が脚光を浴びる中で、実年世代の円熟した小説が評価され話題になるのもいいことだ。
舞台は、ロンドン。バツイチ同士の出会い。
50歳の男と46歳の女。男は建機関係の会社に勤務。女は舞台演出家。
出会い方も、けむくじゃらの小犬が逃げ出すのを追いかける男とそれをつかまえるのに協力する女、という設定がなかなかうまい。
芝居を見に行く。
食事をする。
やがて恋に落ちる。
女の前の夫(イギリス人)をからませるあたりは常套手段か。
いろいろなことを乗り越えて深く愛し合うようになった二人に
悲しい展開が待っていた・・・。
それ以上書くとこれから読む人に申し訳ないので、差し控えよう。
いずれにしても、
人物設定、ストーリーの展開、個々の場面の描き方が落ち着いていて正確で巧みだ。
最近では、まれにみる秀作といえるだろう。
お勧めの一作です。