南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

手紙

    手紙


在宅の アルピニストの 言うことにゃ 家を掃除し 手紙を書こう   

そう言えば メールばかりで 手で書いた 手紙はがきを 出すのもまれだ

悪筆は 直らぬけれど 自分なりに 一字一字に 思いを込める

声かける 電波に乗せて 笑う顔 エレクトロマグネティックの在宅だ

読むと書く 見ると見られる 声かける 知ると覚える 忘れてしまう

鼻歌も 貧乏ゆすりも 筋トレも ちょっぴりハイに なれる七癖

毎日が 何事もなく 過ぎていけ 奇跡とは 平穏無事と知る

Good morning, everybody!
Good morning, the world!
Good morning, the universe!

Have a good day!
Stay home!
Be healthy!

 

新生

 

           新 生      

 

世の中は 変わってしまった われわれも 変わらなければ 生きてはいけぬ

なんという 不自由世界 なにびとも 疑心暗鬼に 遠ざけ合って

新しい 生き方に慣れ お互いを 守り合いつつ 希望見出す

ツイートは 癖になるんだ つぶやきは ぶつぶつ言えど 流れて消える

一瞬の ひらめきよりは 言の葉の 思いつくまま 並べてつなぐ

独り言 呟く我に 呆れつつ 飽きるまで言う 今日も愚かに

愛らしく なれぬものかと 自らの 顔を眺めて 思案投げ首

だれもみな 自分で思う それよりも はるかに頑固 偏屈至極

ひきこもる この危機をこそ 奇貨として 素直になろう やさしくしよう

押し寄せる 情報洪水 春もがく

霞濃し 吹き飛ばせよと 合唱す

ほとばしる 春遡り 堰を閉め

かかかかか 頑固人心 春愁う

昨日今日 春とは言えど 大違い

つぶやきは 春の朧の 寝言かと

つつじ咲く 昨日は晴れて 今日は雨

ああここは 山吹の道 誰と来た

一日を 千年と思う 日は過ぎて 明日をも知れぬ わが身を思う

いつまでも あると思えぬ この命 不信を去りて 憎悪を捨てる

押し寄せる 情報の波 溺れつつ 真偽わからず 藁をもつかむ

今日もまた 終わりつつある 目を閉じて 夢に誘う 妖精を待つ

どこまでも 続くこの道 はかなさを 知りつつついに 信ずることなし

感染の 危機にありても 罵りは 収まらずして 亀裂は深し

罵詈雑言 浴びせて生きる 遺伝子を 痛めつけるか コロナウイルス

分別も 良識もある 善人が 互いにどこまで 憎み合うのか

晴れ上がる 空の彼方に なにが住む 幸い住むと 言える時待つ

在宅に マスク手洗い 防護服 アビガン呼吸器 ワクチン開発

人類は 一網打尽 おのがじし 忍者となりて 網を抜け出す

ひととひと スキンシップを 避けつつも  電子接触 バーチャル会話

 

 

春の雨

 

春の雨

雨は降る 景色は煙り 風も吹く 家々に聞く ため息深し

この雨も やがては上がる 空晴れて 窓より遠く 稜線を見る

くつろいで 過ごすつもりの 一日も 明日の予定が 立たぬ苛立ち

くりかえし 沈む気持ちを 励まして 浮かぶ不安を 笑い飛ばそう 

嘆きつつ 憂いを流す 春の雨

この道は いつか来た道 ハナミズキ

親密に なれない世間 八重桜

鶯の 声をまた聞く 兎坂

ぬかるみを 歩き続けて 日は暮れる 春の嵐に 芯から冷える

強風と 大雨の降る 予報あり 身を縮めこめて ひっそり暮らす

荒れ模様 過ぎれば嬉し のびやかな 春の日差しを 浴びてくつろぐ

うららかな 春は満ち来る わが家にも まぶしき光 消えることなく

目を閉じて 夢みる人は ふわふわと 無菌の園へ 誘われていく

ありえない これが現実 迫りくる 危機は過ぎよと ただ祈るのみ

春の風 肌寒く吹く 山野辺に 隠れ花咲く 離れ里あり

おだやかな 晴れの日のあと 風強く 一時雨降り 曇りの空へ

常ならば 目は口よりも 物を言う ゴーグルした目と マスクした口

心配に 押しつぶされる 心肺の 鼓動激しく 息吐かんとす

 

 

シェークスピア ソネット 86

 

ソネット 86


        W.シェークスピア


わたしの熟考した思いを私の脳に閉じ込め
それらの思いが生まれ育った子宮を墳墓にしてしまうのは
あなたというあまりにも貴い褒賞を手に入れようとする
あの詩人の順風満帆の誇らしい詩のためであろうか?
わたしを死に追いやったのは 人並外れた技巧で表現することを
精霊から教えられたあの詩人だろうか?
いや、わたしの詩を沈黙に追いやったのは あの詩人でもなく
夜ごとあの詩人に援助の手を差し伸べる同朋でもない、
あの詩人も あの詩人に夜ごと知恵を授ける親しい精霊も
わたしを黙らせた勝利者として誇ることはできない、
わたしは彼らを恐れたから詩が書けなくなったのではないからだ、
だがあなたの姿があの詩人の詩を満たす時
わたしは詩を書く対象を失い わたしの詩は力無いものとなるのだ。

 

Sonnet LXXXVI


       W. Shakespeare


Was it the proud full sail of his great verse,
Bound for the prize of all too precious you,
That did my ripe thoughts in my brain inhearse,
Making their tomb the womb wherein they grew?
Was it his spirit, by spirits taught to write
Above a mortal pitch, that struck me dead?
No, neither he, nor his compeers by night
Giving him aid, my verse astonished.
He, nor that affable familiar ghost
Which nightly gulls him with intelligence,
As victors of my silence cannot boast;
I was not sick of any fear from thence:
But when your countenance filled up his line,
Then lacked I matter; that enfeebled mine.

夢想

嫌な現実から逃避する方法。

眠る。

好きなことに熱中する。

たとえば映画を見る。音楽を聴く。小説を読む。絵を描く。

お笑い番組を見る。

散歩をする。料理をする。電話でおしゃべりをする。

ゲームをする。

なにかを学習する。

なにかを組み立てる。なにかを作る。何かを書く。

インターネットで発信する。受信する。

いろいろなものの整理をする。断捨離。

歌う。朗読する。体操する。

お茶を飲む。アルコールを飲む。

夢を見る。

 

 

 

有識者の言葉

なにごとも専門家の意見は重要だ。

新型コロナウイルスについても貴重な情報がたくさんある。

どうやらすぐれた専門家から見ても、新型コロナウイルス

手ごわいようだ。

①病理的な解析が進んでいないこと、

②ワクチンがかんたんに開発できないこと、

③感染してから病状が悪化するスピードが速いこと、

④感染者の8割は無症状か軽症だといわれるが、2割は重症で、

命にかかわる恐れがあること、

⑤根本的な治療法がなく、医療従事者さえ感染を防ぐのが困難で、

戦々恐々としながら患者を受け入れていること、

⑥重症者には人工呼吸器で肺を休ませることが有効だが、人工呼吸器が不足するおそれがあること、

新型コロナウイルスを検査する体制、受け入れる病床数、医療従事者数、医療体制が激増する患者数に対応できなくなるおそれがあること(いわゆる医療崩壊)、

⑧結局、ひととひととの接触を減らすことしか方法がないので、外出自粛、通院や食料品の買い出しなどやむをえない外出の場合でも三密を避け、人との距離をとる(1.8メートル)、マスク着用、手を洗う、顔に触らない、消毒する、洗濯する、ふろに入るなどウイルスの付いた可能性のあるところを徹底的に洗い流し消毒すことに努めることが推奨されている。

⑨一個人としては、コロナ不安に右往左往しながらも、自分ができるだけのことをして後は運を天に任せるしかない。なんだか神頼みになりつつあるようだね。

⑩それと問題なのは、外出自粛を続けていると、経済活動が停滞して、企業倒産、失業者の増大、生活破綻という重大局面に立ち至り、ːコロナウイルスにやられるだけでなく、世界的な不況や貧困にやられる恐れが強いことだ。政府や自治体の支援にも限界があるだろうから、どうやってːコロナ対策と経済活動を両立させるかが避けられない課題となるだろう。頭が痛いね。