南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

詩「砂漠」

 

    砂 漠

 

        南原充士

 

濡れている

拭き取る

まだ濡れている

ぬぐいとる

くさい

消臭剤をふりかける

嗅ぐ

準備はととのった

なんのための?

外出はしない

どこかにこもるか

なにかがやってくるか

早くしないと

じわっと汗がにじんでくる

ふと気が遠くなるような気がした

目覚めれば砂漠にいるだろうと

ささやく声が聞こえた

シェークスピア ソネット 100

 

ソネット 100

 

            W.シェークスピア

 

詩神よ、どこにいるのですか? あなたのすべての力の根源である彼を

そんなにも長い間詩に取り上げることを忘れてしまって

あなたの詩才をなにかくだらない詩を作ることに費やし

卑しいテーマにばかり光を当てることであなたの詩作能力を弱めているのではないですか?

忘れっぽい詩神よ 帰ってきてください、そしてすぐれた詩を作ることで

そんなにも無駄にしてしまった時間を今すぐ取り戻してください、

あなたの詩を評価しあなたの詩作に技巧と内容を与えてくれる人々に向けて

詩を作ってください

さあ、怠惰な詩神よ、立ち上がってわたしの恋人の顔を見てください

もし時が恋人の顔に皺を刻んだのなら

もしそうなら、老化を風刺した詩を書き

時の略奪品を至る所で軽蔑してください、

あなたが時の大鎌と曲がったナイフから彼を守れるように

時が彼の命を浪費するより速くわたしの恋人を称える詩を書いてください。

 

 

Sonnet C

 

       W. Shakespeare

 

Where art thou Muse that thou forget'st so long,

To speak of that which gives thee all thy might?

Spend'st thou thy fury on some worthless song,

Darkening thy power to lend base subjects light?

Return forgetful Muse, and straight redeem,

In gentle numbers time so idly spent;

Sing to the ear that doth thy lays esteem

And gives thy pen both skill and argument.

Rise, resty Muse, my love's sweet face survey,

If Time have any wrinkle graven there;

If any, be a satire to decay,

And make Time's spoils despised every where.

   Give my love fame faster than Time wastes life,

   So thou prevent'st his scythe and crooked knife.

南原充士全集の構想

浅学菲才の小生ながら、小さな野心を持ちつつ創作活動を続けています。手掛けている範囲の広さを生かして、個人全集をまとめたいということです。

1.詩集(現在12冊)

2.小説(現在8冊)

3.57577、575系短詩

4.翻訳詩

5.芸術評論

6.文芸評論(詩論、書評等)

7.価値観の研究

Kindle版小説『喜望峰』の出版について(お知らせ)

本日、Kindle 版小説『喜望峰』が刊行の運びとなりました。

コロナの時代に「希望」を持てるといいですね!

ぜひこの小説をお読みいただきあらたな「喜望」を見つけてくださいね!

よろしくお願いいたします。

かんたんにダウンロードできます。

価格も最低に抑えてありますので、お気軽にお読みいただけると思います。

 

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こんにちは

 

     こんにちは

 

 

            南原充士

 

 

ほんとうに悲しいことを話すことができるだろうか?

深い悲しみについて口にし

だれかに秘密の思いをささやくことが。

 

わたしにできることは静かにしていることだけだ。

沈黙を守り、激しい痛みに耐えることだけだ。

 

いつしか時は過ぎるだろう

そしてわたしは頬笑もうとするだろう。

みんなに「こんにちは」と言うだろう。

シェークスピア ソネット 99

 

ソネット 99

 

                     W.シェークスピア

 

早咲きのすみれをわたしはこのように叱った、

優しい泥棒よ、おまえはどこからその甘い香りを盗んだのか

わたしの恋人の香りから以外にはありえないよね?

おまえの頬を粧う華麗な紫も

おまえがわたしの恋人の血に浸ってたっぷりと染まったからだ、

百合に対してもその手の白さを盗んだことを責めた

マジョラムの蕾はあなたの髪を盗んだのだった

薔薇と言えば不安に戦いていた

恥じらって赤らむものもあり、絶望して青白くなるものもあり

赤くも白くもなくその両方の色を盗んだものもあった

その上さらにあなたの香りさえ横取りしたのだった、

だがその盗みゆえに 薔薇は その花の盛りに

復讐の虫に蝕まれて枯れてしまうのだ

さらに多くの花をわたしは見てみたが、あなたからその甘い香りや色合いを

盗まなかった花など一本もないのだった。

 

 

 

Sonnet XCIX

 

        W. Shakespeare

 

The forward violet thus did I chide:

Sweet thief, whence didst thou steal thy sweet that smells,

If not from my love's breath? The purple pride

Which on thy soft cheek for complexion dwells

In my love's veins thou hast too grossly dy'd.

The lily I condemned for thy hand,

And buds of marjoram had stol'n thy hair;

The roses fearfully on thorns did stand,

One blushing shame, another white despair;

A third, nor red nor white, had stol'n of both,

And to his robbery had annexed thy breath;

But, for his theft, in pride of all his growth

A vengeful canker eat him up to death.

   More flowers I noted, yet I none could see,

   But sweet, or colour it had stol'n from thee.