南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

詩集・詩誌・小説等評

春野たんぽぽ詩集『赤い表札』

春野たんぽぽ詩集『赤い表札』。第一部赤い表札では故郷を舞台に少女時代の思い出が正直に語られる。第二部環状線では大阪に出てきてからの経験が故郷との対比の下に描かれる。詩は次第に現実にフィクションが加わり立体性とユーモアが魅力を強める。独自の…

志村喜代子詩集『人隠し』

志村喜代子詩集『人隠し』。時間は過ぎ去りすべては失われる。ここにはここにはいない者への眼差しがある。時は人隠しの魔として君臨する。人間は、抗いようもない時間や逃げようのない運命に翻弄され、現実を直視しつつ生きざるを得ない。冷徹な目で描かれ…

海東セラ詩集『ドールハウス』

海東セラ詩集『ドールハウス』。知的な企みと抒情性に満ちた散文詩集。建築家のような視線で専門用語を駆使し詩作品ごとに気の利いた引用を付加している。緻密な観察は印象派の画家のようでもあり構造的なアプローチと相俟って瀟洒な詩の家を建てている。ド…

神品芳夫著『木島始論』

神品芳夫著『木島始論』。1928年生2004年没の詩人木島始の生涯と活動をつぶさにまとめた労作。広島の原爆に象徴される戦争への思い、黒人文学の紹介、ジャズ評論、詩劇、詩画集、絵本、訳詩等多岐にわたる木島の全体像に迫る中で示される木島への溢…

苅田日出美詩集『草茫茫』

苅田日出美詩集『草茫茫』。コロナ危機に陥っても一定の距離を置いて現実を観察しそれをユーモアに満ちた言葉に変えてしまう。1938年岡山生まれの詩人はかつて空襲も経験し、様々な出来事に遭遇したのだろうが、それらに屈せずに情熱を込めて書かれてき…

松尾真由美詩集『多重露光』

松尾真由美詩集『多重露光』。世界に一台しかない高性能カメラは、第一段階で現実の情景をさまざまに加工して細密な映像に作り上げ、第二段階でそれを光によって言葉に変換する。装飾的な様式美にこだわったポリフォニックで多彩で緻密な言葉の造形は、類例…

尾久守侑詩集『悪意Q47』

尾久守侑詩集『悪意Q47』(思潮社刊)について(感想) JK(女子高生)がひとつの通奏低音となって流れているところが特徴的だ。そこには若い女性歌手のグループから受けるような甘酸っぱいムードが充満しているので読者は浮ついた精神状態になって詩作品の展…