南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

書く楽しみ

ずいぶん長いこと文学的な活動をしてきたが、書くことはいつも重荷であったような気がする。もちろん苦労して書いたものがうまく書けたと思える時はそれなりに報いられたと感じられたが、新たになにかを書こうとするときは先の見えない道を進むような困難を感じたものだった。

自分は、詩からスタートして、俳句、短歌、小説、評論、英詩の翻訳へと分野を広げてきた。さまざまなジャンルを手掛けることで自分の欲求が満たされると思えたからである。それらはいずれをとっても容易な技ではなく、刻苦勉励を強いるものである。これまでも書くことに躓いて長い中断期間を経験してきたところである。

ところが、最近に至って、書くことに楽しみを感じる場合があるようになってきたのである。なにか新しい世界を作ることができる喜びが自分を書く苦しみからいくぶんか救ってくれるように感じられるのである。常にうまく書けるわけではなくても落胆することもなく、たまに満足できるものが書けると素直に喜んでしまう。

いつまでこんな幸福な心情が続くかどうかわからないが、束の間でもこういう気持ちでいられるこに感謝しながら物を書いていこうと思う。