南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

抽選

籤運がいいと言う人がいる。

たしかに宝くじに当たったり商品を手に入れたりマンションに入居できたりした実績のあるひとは籤運がいいと言うことを否定することはむずかしいだろう。

しかし、確率論から言えば特定のひとに有利な条件はないので、たまたまいい結果が出たに過ぎないと言えるだろう。

運を天に任せるということがあるが、籤に当たるように天に祈るということも行われる。

今回たまたまある抽選で心から当選を願いながら籤に外れた経験をしたので、心境は複雑である。運が悪かったということは認めても、いつも運が悪いとかこれからも運が悪いだろうなどとは思いたくない。今回は外れたが次は当たるかもしれない。念力も運命も信じないクールな態度で抽選にのぞむのが得策だと自分に言い聞かせている。

大売出しでがらがら回る抽選機を手で回したときに、丸い玉が出てくるのをどきどきしながら見守った記憶がある。あるいは、じゃんけんで勝ったり負けたり、あみだくじを引いて当たったり外れたりしたことも思い出される。

人間の命ははかなくいつ失われるか予測がつかない。そういう不透明な見通しの中で生きざるをえない人間は、なにかとゲンを担いだり、ジンクスにとらわれたりする。災いを避けたいという心の動きが論理的でない振舞いにも通じやすい。

いずれにしても、悪い抽選結果が出たからと言って落胆せずに淡々と受け止めて気持ちを切り替えていくべきだとあらためて思う。