南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

「笑う種」3

   「笑う種」3

 

             南原充士

 

笑う種の分析をした研究所は

笑いの成分を抽出して

抗うつ薬の製造にこぎつけた

 

笑いは免疫機能を活性化するという

研究結果は知られていたが

笑いを引き起こす薬は開発されたことがなかった

 

飲んだら気持ちが晴れ晴れとしたという

評判は評判を呼び

薬は爆発的に売れた

 

製薬会社は大儲けをしたが

ひとつ気懸りなことがあった

笑いはじめると止まらないという苦情だ

 

研究所はついに新薬を開発した

笑いは止まったが

笑う薬が効かなくなった

 

お客はまた寄席に通うようになり

芸人はますます芸を磨いた

笑う種は品種改良が続けられている