南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

「笑う種」1

  「笑う種」1

 

           南原充士

 

このところ笑っていない

顔の筋肉がこわばってしまった

笑いの感情さえ忘れてしまった

 

チンパンジーが腋の下をくすぐってきた

足の裏や首筋もこちょこちょしてきた

もう我慢できない

思わず笑ってしまった

 

チンパンジーにバナナをやった

ケケケと笑った

自分もバナナを食べて

ケケケと笑った

 

いい気持ちで鏡を見た

そこにはもう一匹の

チンパンジーが映っていた