南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

渡辺淳一論

 ぼくが尊敬している作家のひとりだ。

 性愛というものにきちんと向かい合える数少ない作家だ。

 性愛にはタブーや偏見がつきものだ。

 かなりの知識人でも性愛を科学的にとらえることはむずかしい。

 渡辺淳一は医師の資格ももつ。

 人間の生理をよくわかっている。心身のしくみを踏まえて性愛をとりあげる。

 人間関係を描く。運命のいたずらをすくい上げる。愛と死にこだわる。

 「失楽園」「愛の流刑地」はどちらも日経新聞に連載され。社会現象を引き起こした。

 「エ・アロール」は老人ホームの人間模様を描いた。

 ぼくは、このようにリアリズム小説が好きだ。くそリアリズムではない。
 リアリズムに裏打ちされたイマジネーションが好きだ。

 ファンタジーも現実に裏打ちされていれば説得力がある。

 愛の流刑地では、女を絞め殺した状況を医学的に描写している。拘置所や刑務所、裁判や検事、弁護士、裁判官の役割などもことこまかに書き込まれている。綿密な取材をした上で、女が恍惚のうちに死んでいく場面を想像して、小説にしたのだろう。

 「ありえない?」・・・ということを取り上げるのが真の文学だ。勇気だ。恐い世界だ。

 渡辺淳一の年齢であそこまで真剣に性愛にこだわりつづける作家は少ない。ポルノに堕することなく
正々堂々と人類永遠のテーマに取り組み続ける渡辺淳一に賛辞を贈るとともにこれからますますの活躍を期待したい。