南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

「指田 一展」を見て(感想)

 「指田 一展」(2008.11.3-11.8、於 東京銀座 ギャラリーGK)を見て

 
 指田 一(敬称略)が制作したオブジェは、詩誌「SPACE」の表紙で何度も見たことがあった。

 今回、指田 一から、個展への案内のはがきをもらったので、本日(最終日)の午後、銀座へ出かけてみた。

 土曜日の銀座は休日を楽しむ老若男女で混雑していた。
 その中で、目指す画廊をさがしたが、なかなか見つからなかった。界隈を一回りして、よく見ると、「指田 一展」という案内板が眼に入った。大通りからちょっと中へ入ったところに、ギャラリーGKはあった。

 小生が中へ入ったときには、入口付近に4,5人の人がいすに座って歓談中だった。
 
 小生は、一番奥にいた男性が指田 一だろうと見当をつけて、あいさつをしたら、そのとおりだった。 詩誌で、たがいに名前は知っていたが、顔をあわせるのは今回がはじめてだった。指田 一は、おそらく小生と同世代、団塊の世代のように見えた。
 
 ギャラリーには、作品が五点展示されていた。

 それらは独特の味わいがあり、簡単に言葉にできない、造形固有のインパクトを有していると思った。

 直感的に、思ったことを列挙してみれば、次のようである。

 ・詩誌の表紙で見ていた作品は白黒写真による画像だったが、実物はカラフルで、遊びを突き詰めたような色使いがおもしろいと、まず感じた。

 ・多様な素材が縦横に組み合わされ、形作られ、色が塗られており、それらが、抽象と具象のはざまで、人間味や親しみをたしかに感じさせているところが魅力だと感じられた。

 ・今回の作品は、木をメインの素材として、布や糸やビニールや石や石膏や石油缶や金属その他の意外性に富んだ素材が用いられていたが、世の中に存在するものなら何でも使ってやろうとする、自由奔放な発想が魅力的だと思った。

 ・一見おおらかな印象を与える外観だが、よく見ると作品の細部にまで丁寧な仕上げが施されていて、指田 一という造形作家の芸術創造への大胆さ及び神経の細やかさをみることができた。

 ・指田 一の書いた詩を、小生はすでに多数読んでいるが、その詩が「ぞっとする感覚」を言葉で描き出すことを目指しているとしたら、その造形においては、「ほっとする感覚」を目指しているのではないかという気がした。

 ・五点の作品の中で、小生がもっとも惹かれたものは、ウインドサーフィンのような造形の作品だった。やや丸みを帯びた木の板のはじっこで、セールのようなものを操る少年が反り返る姿は、楽しそうに沖を目指して進んでいるように見えて、救いと希望を与えてくれるような気がした。

     ―――

 ざっと以上のようなことを感じながら、指田 一にあいさつをしてギャラリーをあとにした。夕方の銀座はますます混雑がはげしくなっていたが、小生の頭の中では、見てきたばかりのオブジェが、愉快な表情としぐさで踊っているように思えたのだった。