南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『脳の洗濯」(短歌系)(2021年10~12月)

 

 

『脳の洗濯』(短歌系)

      (2021年10月~12月作)

 

 

        南原充士

 

 

不可能と 思えばつらい 邂逅も

万が一でも ありうることと

 

嵐過ぎ 光まぶしき 秋景色

眺めているのは だれでしょう

 

挑発の 仕方忘れて 秋桜

そよぐ道辺を 休みつつ行く

 

ひたすらに 読書の秋に 耽るひと

知らない著者も ちょいといいかも!

 

朝明けの 空の中ほど 月ありて

淡い名残も 消え去りていく

 

大学の 後輩諸君 名も知らぬ

先輩の声 菊もまたよし

 

だれもいぬ 砂漠にあって 叫びいる

恐竜のごと 言葉を紡ぐ

 

寒がりと 暑がりがいて エアコンの

設定温度 服装迷う

 

室内と 外気の温度 上下して

エアコン設定 ついて行かれず

 

あちこちに センサーあれば 自動的

機械任せの 不調に落ちる

 

気候とは つまり変動 生き物の

汗ばむ肌に かじかむ指に

 

ささやかな 諍いあるも あればこそ

見て見ぬふりで リセットボタン

 

どうせなら 楽観的に 生きようと

思いはすれど どうしたらいい?

 

意図しない 言葉は刃物 傷つけて

恨みは深し 消えることなし

 

こんなにも 生きづらい世に 永らえて

お茶を濁して 風に任せて

 

冷房か ドライ送風 暖房か

窓開け放つ 運転停止か

 

この空は 乾きが悪い 洗濯物

風よ吹かぬか 日は射さないか

 

日替わりの 馳走と思う 心持

かすかな不調 今日も押しやる

 

今日はただ しずかにしてる 秋の日の

零れる光 ひとり浴びつつ

 

俯ける 葉に注ぐ日の 柔らかく

徐々に広がり 起きて伸び行く

 

ほとんどを 捨ててしまえば 新しき

光の下で 見定め拾う

 

捨てられる 限りを捨てて 草むらの

影の中にも 生まれる光

 

妬ましい 虚勢のごとき 影を踏み

蹌踉として 転茫然

 

できるなら 十人十色の 一人でも

意気投合の センスがほしい

 

この歌は いいと思えぬ わたしでも

あなたのことは 信じています

 

その意見 ついていけない 自分でも

あなたを責める つもりはないよ

 

違いつつ ともに遊べる 知恵の輪の

抜けない角に ひっかかる指

 

不平から 満足よりも 諦めへ

向かったふりで 巻き返す意地

 

破綻から 生まれる狂気 正気へと

翻す風 したたかに吹け

 

それぞれに 勝手にすれば 争わず

無視も上手に くすぐる擬態

 

ZOOMへの 参加予定が 紛失し

気になるままに ずるずる過ぎる

 

スーパーに 並ぶ食品 買う客の

暮らししみ出す 匂いは混じる

 

しかと見て 詩化するものを シカトスル

仕方がないね 仕掛けられたら

 

秋の夜は 妖精たちの 乱れ舞う 

電子書籍の 楽園に寝る

 

人はみな 互いの部分を 誤認して

複雑怪奇に 絡む感情

 

人と人 中間距離は とりにくい

遠ざかりすぎ 近づきすぎて

 

ともかくも 批判する前 鏡見る

おれに向かって なにを言うのか

 

歓びは 天災みたい 唐突に

忘れたころに やってくるから

 

身中の 短気なおれが 理不尽に

怒り出したら けんかになった

 

この頃は わけもないのに すぐ怒る

われ持て余し しばし散策

 

信頼を 基礎に喧嘩す 年の功

浅い池へと 小石を投げる

 

つまずいて たてなおしては またころぶ

起き上がったら 転ばぬように

 

なぜだろう あなたがわたし 好まない

わたしあなたを 嫌わない

 

近づけば 傷つけあうのを 避けるため

遠くで見ている 共存もある

 

悲しきは 信じあえない 者同士

心を閉じて 憂き世を生きる

 

大仰な 悲観の台詞 捨て去って

街に出づれば 祭りの囃子

 

満月って 夜空で特大だねと 古今東西の人々に

相槌を求めたくなる 今夜は満月

 

突然の 欠落あれば 肝潰す

徐々に復せば 自滅免る

 

酷薄の 定めはだれも 逃げられぬ

なんとか軽い 痛みで済めと

 

激痛の 連鎖逃れて 気絶して

意識戻れば 恐怖に呻く

 

極限を 言えば救いは 逃げていく

目先を変えて 煙に巻く技

 

苦境にも 笑って見せる 究極の

逆転技を 繰り出す秘伝

 

夕べより すこし悲しく 忘れ草

思い出したよ 昔の映画

 

自覚する 朴念仁の 自分でも

歌の力に 心奪わる

 

フルッチョと 思い出しては 胸倉を

つかむ歌声 時間を超えて

 

的外れ もっともらしい 物言いも

見抜かれざれば まかり通るよ

 

楽しめる 自分探せば やってくる

楽しませれば 楽しい自分

 

物書いて テレビ見て 散歩して

新聞読んで 居眠りをする

 

俊太郎 シェークスピアに ベートーヴェン

ミケランジェロに チャップリンほか

 

すしさしみ ステーキワイン スパゲッティ

天ぷらかつ丼 ラーメンうどん

 

囲碁将棋 麻雀カード 宝くじ

競馬競輪 カジノにゲーム

 

りんごなし みかんにぶどう かきいちご

メロンすいかに キウイマンゴー

 

どらやきに 薄皮饅頭 栗鹿の子

もなか大福 生菓子干菓子

 

親切は 利害を超えて 差し伸べる

理解を超えた この不親切

 

なぜかしら ふらつく足に めまいかと

原因不明の 異変に焦る

 

よく眠り 食事休養 十分で

のんびり過ごす コロナの日々に

 

喜びの リストを作り 試みて

悲しいリスト 消し去る自分

 

バスタイム うつらうつらの 夢の中

血行改善 巡る楽園

 

立ち直る きっかけあれば 迷わずに

踏み出してみる 小さな一歩

 

期日前 投票所には 人が混み

投票用紙 しずかに投ず

 

自作など 忘れてしまう 存在と

思っていたが ときに助ける

 

そのように 自ら助く 作品と

思えばそっと あなたに捧ぐ

 

窮地とは 脱するものか とらわれて

滅びる危機を 追い払う意気

 

散々な 一日だった 術もなく

おろおろしては 夕闇迫る

 

見上げれば 冬の星座が 輝いて

あれがシリウス あれがオリオン

 

晴れ渡る 夜空はいつも 苦しみを

紛らせる術 教えてくれる

 

空元気 忘れていたよ 危うきに

襲われてみて 引っぱり出した

 

甘い夢 とろけ落ちては 変身す

あなたの夢を わたしが夢む

 

投げ縄を かいくぐっては ブーメラン

落とし穴抜け 綱渡り終え

 

果てのない 地獄の負荷を 背負わされ

日ごと夜ごとの 責め苦に呻く

 

翻す 掌のごと 暗雲の

消え去る空に 光を飛ばす

 

うつろなる こころの内の 深い影

秋の光を 浴びて輝く

 

次々と 襲う災厄 かわしつつ

飲めや歌えや 舞えや踊れや

 

老いてなお 盛んな知人 見上げつつ

ひそかな知恵を 汲み取らんとす

 

患いを かかえながらも 微笑みを

浮かべ続ける ひとに喝采

 

こんなにも まぶしい光 秋の空

うれしくもあり おそろしくもあり

 

妙なのも 慣れてしまえば 当たり前

いいか悪いか 奇妙な自分

 

われもまた 思うことあり 披瀝する

思慮分別の 濾過機に掛けて

 

好かれない 好きになれない 性格に

絶望せずに 希望を探す

 

ほめるより しかることこそ むずかしい

ためになること みみにいたいよ

 

ないものは ねだりはしない おしみなく

わけあたえても いいものだけを

 

月変わり めくる暦も 埋まり行く

日々限りなく 些末に生きる

 

悪くても それがふつうだ それほどの

変わりなければ そのままでよい

 

よく見ても つまらないもの 遠慮なく

捨ててしまえと 自らに言う

 

心して 取捨選択の 道を行く

身軽になって 前へ進もう

 

信じるに 足る人あれば ためらわず

門を叩いて 来意を告げる

 

だれだって 全部は言わず 見せません

人柄察し 飛び込んでいく

 

結局は 人物次第 スケールの

大きさ見抜き 信頼しよう

 

結局は 人物次第 スケールの

大きさ見抜き 信頼しよう

 

どこかしら アウトサイダー 捨てきれず

創作だけは 王道を行く

 

社会では 良識あるも フィクションは

魑魅魍魎の 罪深き業

 

ユーモアも そこまで行くと やり過ぎと

心の声が 叫ぶのを聞く

 

洞察の 足りない物は ほめちゃだめ

慢心させるは 罪深いこと

 

大人なら 違いがわかる 理不尽に

殴りつけたり 蹴ったりしない

 

さて今日は 晴れた一日 洗濯と

掃除と散歩 衣替えする

 

隣人も 遠くになった 親戚は

行方不明だ 友よ元気か?

 

えらそうに 言うのも多分 計算だ

けしかける口 ひっかける鉤

 

遠い耳 つるべ落としに 日は暮れて

夢の内へと 彷徨い行きぬ

 

さりげなく 風の便りに 伝えてよ

ぼくは好きです あなたのことが

 

あなたにも いいところある 憎めない 

いたずらっ子の 笑顔が好きだ

 

駅伝を 走るは風か 稲妻か

空飛ぶ絨毯 超音速機

 

生きるとは 雑事の中に 一抹の

喜怒哀楽を 読みとることか

 

詠嘆の 慣性を逸れ 冷淡の

感性に揺れ 振り子のごとし

 

迷いつつ 誰にも言えず 捨て去れば

狂おしく燃ゆ 紅葉の色よ

 

正直に 生きているのか 自問する

真実を知る 恐怖は深し

 

言わぬまま 言えぬままとも 思いつつ

茫然自失 日々に躓く

 

さてもまた 掛け声ばかり 口を突く

腑抜けの肝に 喝を吹き込む

 

幾たびも 通り過ぎたる 道沿いの

店の並びは うろ覚えなり

 

気が付けば いい年寄りだ まじやヴぁい 

若返る術 めちゃ試したい

 

見た目より 心は若い 故郷の

雲見上げたる 青年の意気

 

朝刊の 分量に比し 夕刊は

薄っぺらだが 不自由はなし

 

積年の 種々の埃や しみ垢を

こそげとっては 一気に捨てる

 

自堕落と 言うほどでもない 怠惰癖

なにに焦るか なにがしたいか

 

緩慢な 動きの中で 気が付けば

大きな山が 動いたような

 

あれこれと 思い悩むが 悪い癖

さて今日もまた さてさてさあて

 

どうせなら 洒落のひとつも 口走り

ピエロの鼻で 笑いを誘う

 

いくたびも 指紋認証 拒まれて

スマホか指か どちらが悪い?

 

人が皆 ぐずるおいらに 愛想尽き

蜘蛛の子散らす 夢にうなされ

 

暗いこと ばかり言うから 嫌いだと

そっぽむかれて あわてふためく

 

同世代 上の世代の コロナにも

負けぬ姿に 触れて安らぐ

 

とは言えど 火急の用に せかされて

ひとまずどける 億劫の石

 

なにごとも 気の持ちようと 思いつつ

持ち損ねては 窮地に陥る

 

だれもみな 自分のことで 精一杯

鏡を見れば なぜか悲しい

 

思うより 限りある世を 奔放に

生きてみたいと 心に決めて

 

ひたすらに 磨くセンスを てこにして

玄人筋を うならせたいよ

 

朝昼晩 日々につぶやく 執念で

しかとされても へこたれはせず

 

だめだとは 言いにくいとき そっぽむき

にわか仕込みの ニュースを語る

 

孤低にて 徘徊するも 影を引き

一足ごとに 苔を蹴り捨つ

 

あなたのは ぱっとしないと 無言にて

伝えた途端 めった切りさる

 

あれこれの 忖度を去り 率直に

物を申せば この返り討ち

 

自信だけは 失っちゃダメ ぼろくそに

言う人あろうと 聞き流すのみ

 

自虐には 怪しい誘い 惑わせる

危険が潜む 大概にせよ

 

謙虚さを 原点として 磨き上ぐ

職人芸を もっぱらとして

 

自信作 失敗作も ひっくるめ

これがおれだと 言えるまで書く

 

結局は 人間性に 帰結する

されど修辞は 不可欠の技

 

作品に 惹かれて作者 浮かび来る

言葉の陰に 人の気配す

 

おだやかと 言われたことも へんくうと

言われたことも ありましたねえ

 

名も知らぬ 提供公園 一脚の

木の椅子あれば 腰かけてみる

 

作品が 自分自身を 満たすなら

自信を持って 差し出してみる

 

いつのまに 月に吠えるを 読み取れぬ

時代が来ると 思いもせずに

 

現代詩 古典になって 読み継がれ

あるいはとうに 忘れられるか

 

オミクロン 変異は常と 知りつつも

いたちごっこの ワクチン開発

 

なんとまあ あれこれ異常 襲い来る

日々の暮らしは 平穏遠く

 

危機にある 自分であれど 毎日の

テレビに流る 諸事を注視す

 

距離感は いろいろあって それぞれの

軽重を見て 長短を知る

 

ぐちぐちと 愚痴を言うのも 治療法

へらへらしても おろおろしても

 

おろおろと

みまわす世界

くりかえす

ロックダウンも

ンんざりだねえ

 

話し込む いとまもあれば 対面の

直の熱気を 浴びて引き合う

 

神経を 傷つけあって 生きる時

ウイルスよりも 愚かさに泣く

 

実作者 意外に遠い 研究者

見えない壁を 取っ払おうよ

 

権威とは 否定するほど 強くなる

心の中の 依怙地を崩す

 

いい仲間 限られた時 名残惜し

この場所きっと 忘れはしない

 

因習に 苦しむことの 多ければ

空に投げ上ぐ 無数のくびき

 

いかにして 生計立てる おれたちは 

ひきつる笑い ジョークにみせて

 

ふしぎだね 寒くなったり 暑くなる

意外なことが 次々起こる

 

老いてなお 謎ばかりだと 思う日々

わからぬままに 生かされている

 

あるときに 特別のとき やってくる

天地のゆらぎ 漏れる慟哭

 

夕方の 電車はかなり 混んでいて

オミクロンなど おくびも出さぬ

 

夕刻の 総菜売り場 人混みを

抜けて出れば 雨粒落ちる

 

おれなどが およびでなかった おやしろへ

おまえとならば おとずれてみた

 

さてもまた 痛みしびれの 襲い来て

さらいゆくのを どうにか止める

 

からからと 笑って見せる しぐさのみ

賢く生きる 処世と気づく

 

自らの 内に住まうは 敵味方

ともすればやや 非勢にあらずや

 

自らの 膝を打つ槌 力込め

悪鬼出でよと とんとんと打つ

 

おおよそは 自滅の仕業 鬼滅より

いっそ魔術で 窮地を救う

 

深更に 鑿打つ音の しるければ

動悸高鳴り 早鐘やまず

 

呆れるは 自問自答の 悲喜劇の

ポンプのごとく 激しく上下

 

寒くって 雨風強く 縛れる日

北の子供に Happy Birthday

 

二人の子 完全防寒 連れる父

乗り合わせたる エレベーター内

 

だれにでも 心に潜む 痛みある

新幹線の 飛び行くを見る

 

リスクとは 生命身体 家屋敷

家族友人 収入の危機

 

何事も 定義してみる 輪郭の

浮かび上がって 身近に見える

 

争いを 包摂しつつ 共存す

憎み合いつつ 愛し合えるか

 

氷雨降る 凍える心 身に潜め

涙で濡らす 足跡を踏む

 

おうおうと 楽しめないと 嘆きつつ

歳末セール 人混みの中

 

悲観的 ひっくり返し マジシャンの

仕草取り入れ 踊って歩く

 

素のままに 好き嫌いさえ 振り分けて

正直すぎる 自分に惑う

 

今日は晴れ どんな顔して 目覚めたか

鏡よ鏡 笑顔を映せ

 

ニュースとは ほとんど悲劇 喜びは

ひっそり思う ひとそれぞれに

 

ひとのため なにかできると 思うひと

あいさつひとつ かわすはじまり

 

質素にも 飾り立てにも 捨てがたい

魅力があるを 忘れずに書く

 

何事も 無理無駄ムラが ないがよい

削るだけでは 足りぬことあり

 

ブラックも ニュアンス微妙 暗黒の

冷血浴びて 薔薇の花咲く

 

このひとと 思うあなたに 出会いたい

探して訪ね 真摯に求む

 

民主主義 価値あるものと 信じつつ

克服すべき 方途はありや

 

絶対は ないとは知れど 安易には

捨てきれないよ 伝統の価値

 

実験は 戦争ではない 取返し

やり直し利く 賢いチョイス

 

適量を 感じて止まる 栓がある

入る切るの神 駄々洩れの人

 

ほどよさは 人知を超える 危うさの

祈る心の 女神のお告げ

 

限りある 命と知れば 心憂き

曇り空にも 輝きを見る

 

本年は すぐれた詩集 多かった

不思議の星の 巡り合わせか

 

半世紀 同人詩誌は 遠き過去

今宵電話す 当時の仲間

 

詩に生きる 横道あれど 生と死の

恐怖と魔力 見つめて歩む

 

魅入られた 詩神を崇む 頭垂れ

幻想の辺へ 彷徨いて入る

 

名も知らぬ 鳥鳴く朝に 我知らず

無視に逃げ込む 虫けらになる

 

俊ちゃんは 心の友さ 親しみは

うすきヴェールを 透けては行かず

 

偉大なる 人物が好き 平凡な

あなたも好きさ 好きに訳なし

 

このところ 整理ばかりの 日々にあり

視野をかすめて 天使が飛んだ

 

俺自身 何者でも無し ただひとつ

すてきなひとに こだわるのみさ

 

強風に 倒れる鉢の 多ければ

抱えて運ぶ 夜のベランダ

 

激流に 翻弄される 木くずかと

強張る四肢に 力を籠める

 

一枚の 木の葉のごとく 吹き上がる

揺れて回って ジグザグに落つ

 

唖然とす 無慈悲の仕業 見せつける

鬼か魔物か 神か仏か

 

口内炎 口の筋肉 衰えて

あちこちの肉 噛めば化膿す

 

手心は 加えぬものと 覚悟する

生きる限りの はらはらどきどき

 

そうなのか そうではないか そんなこと

それほどあかく そまりはしない

 

だれもみな 自分のことで 精一杯

時折ふっと 周りに目をやる

 

他人など あてにはならぬ とはいえど

ほかにあてには できるものなし

 

矛盾とは ひとの本質 論理とは

命を超えて つなぐ軸索

 

物忘れ 自覚せぬうち 進行す

新たな自分に 付き合う老後

 

認知症 認めたくない 脳内に

癒えようのない 蛋白積もる

 

口内の 筋肉までも 緩み来て

噛んで傷める 食い意地は張る

 

ふと見れば シュミレーションが 気にかかる

そっと呟く シミュレーションと

 

避けられぬ 災い多く 襲い来る

ダメージ苦痛を 減らす方策

 

しょんぼりと うなだれるのは 能がない

空元気でも ないよりましと

 

なにゆえに 運命苛酷 容赦ない

あらためて見る 空の青さを

 

同じなら オプティミズムの ペット抱き

笑顔ふりまく 散歩に行こう

 

一吹きで 空に拡がる シャボン玉 

子供のような ママパパの顔

 

一年を 振り返っては 複雑な

思いに沈む 内省に喝

 

凄惨な 現場にあれば 言葉なし 

崩れる足で よろよろ歩く

 

泥水も 血糊の池も 潜り抜け

乾いた砂漠 延々と行く

 

終業日 かかえた荷物 零しつつ

生徒の後を 生徒が通る

 

幾人か 尊敬できる ひとがいる 

だれとは言わぬ だれにも言わぬ

 

よく食べて よく寝て起きて よく動く

欲張りはせず よく笑う

 

こんなこと つまらぬことと 知っている

ちょいとつまんで そっくり捨てる

 

さて今日の 計画は何 忘れたよ

とりあえず顔 洗っておこう

 

窮したら 場所を変えよう 困ったら

だれかと話し なにかを食おう

 

人なんて 原始動物 快眠と

快食快便 形而下に生く

 

二重性 世の中の常 裏表

愛憎好悪 正邪清濁

 

量が減る 実質値上げの 食品に

身の細るかの 現実を見る

 

いいものを 見抜く目を持つ ひとあれば

ぶらり現る あなたの前に

 

偏屈と 頑迷固陋 石頭

割って砕いて 脳の洗濯