南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

気持ちを読み取ること

 ひとの気持ちを読むことはむずかしい。

 はっきりと口に出してくれれば分かるが、黙っているとなかなか分からない。

 男女関係がいちばん真剣になれる場合のひとつだろうが、利害と愛情は密接にからみあうのが

人間の常だ。社会性というか経済性というか。要は、ひとは生活のためにお金が必要だからだ。

で、ひとが近づきあうときに、なんらかの経済的なメリットに期待していることがあるわけだが、

実際に期待を裏切られるような場面に出くわすと、本音が急に表面化することがある。

ののしりあったりもする。

しかし、人間が本当につきあえるかどうかはそれからが問題だ。本音をぶつけあったあとに理解がふかまり、信頼が強まることもありうる。愛情や友情が強まることも。

逆に亀裂を生じたり、きまずい結果におわることもありうる。
最悪の場合も覚悟しておく必要があるだろう。

人間が出会うということは、きれいごとばかりじゃすまない。
清濁併せ呑んではじめて付き合いが本物になるのかもしれない。

スリリングだなあ!
先が見えない。
でも、全力を尽くして最善の成り行きを追求しよう。

そういう心理学こそ、芸術の大きなテーマといえるだろう。

人間、この不可思議な存在。

そこに驚いて芸術が生まれる!