南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

南紫音 ヴァイオリン・コンサート(2008年11月15日 紀尾井ホール)

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【 南紫音 ヴァイオリン・コンサート(2008年11月15日 紀尾井ホール)を聴いて 】

 昨夕、南 紫音(みなみ・しおん)のヴァイオリン・コンサートを聴いた。

 1989年北九州市生まれというから、まだ19歳。将来が楽しみな若手ヴァイオリニストである。

 曲目は、以下の通り。

  ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ 第一番 ニ長調

  ブラームス ヴァオリンソナタ 第三番 ニ短調

  ラヴェル  ヴァイオリンソナタ(遺作)

  サン・サーンス ヴァイオリンソナタ 第一番 ニ短調

 {アンコール}

  プロコフィエフ ハイフェッツ編曲 3つのオレンジへの恋 「マーチ」

  ドビュッシー ハイフェッツ編曲 美しき夕べ

 
 選曲は魅力的で聴衆としてはわくわくして演奏を聴くことが出来た。

 音楽を聴くときには、基本的な要素として、曲の解釈、音程、リズム、強弱、ハーモニーなどに着目するが、昨夕は、特に「音色」というものを考えさせられた。

 たとえば、明るくて軽快な音色が続くときと、暗くて重い音色や神経にさわるような高音に移行する場合などは、ボウイングにも大きな違いがあるのだろう。

 南 紫音について言えば、伸び伸びとした弾き方は好感が持てたが、音色のつながりやバランスのとれた推移という点で少し物足りなさを感じた。

 昨夕の曲で言えば、ベートーヴェンブラームスはきわめて有名な曲であるので、聴衆の注目と期待が大きいので負担だったかもしれないが、音色が変化していくときに、うまくつながらなかったりジャンプできなかったりという箇所が気になった。しかし、そういう荒削りなところもありながら、曲の解釈は正確で正々堂々と難曲に挑戦しようする姿勢は大いに評価できるし、少々の音の裏返りや濁りなど気にせずに、骨太の演奏を貫こうとする態度には、将来性があると思った。

 ラヴェルの曲は比較的音色が類似性をもつ範囲の中で動いていくので南紫音のよさが出ていたと思うし、サン・サーンスの奔流のような抒情性と様式美を惜しみなく表現できていたと思う。

 アンコール曲は、二つとも小品だったが、それぞれの音色の魅力を感じさせるものだった。

 南紫音はまだまだ若い。細部の音色の表現を磨いて、大輪の花を咲かせることを望みたい。