南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『偉人伝』(価Ⅲ=34)

 
        『偉人伝』

                                価値観の研究第三部 その34

1.人間の感情に訴えるものにはいろいろあるが、文学もその代表例のひとつだろう。

 文学は登場人物が欠かせない。歴史書なら人物や出来事の客観的な記述で終わるが、文学となると、登場人物の考えや行動を記すことによって、ひとつの時代の雰囲気や状況を生き生きと描き出すことができる。
 
 文学の登場人物は様々なタイプがありうるが、伝記は特定の人物に焦点を当てて描くので、人物像が明確に浮かび上がりやすいし、偉人伝ともなればなにかの分野で傑出した記録を残したと言う点でさらに魅力が増すことになる。

2.偉人にもいろいろなジャンルがある。政治家、経営者、軍人、哲学者、作家、音楽家・画家等芸術家、医師、発明家、様々な分野の研究者・学者・技術者・職人、俳優、歌手、芸能人、スポーツ選手、社会福祉活動家、教育者、探検家、料理研究家農林水産業、種々の製造業、商社、金融業、建設業、建築業、種々のサービス業その他諸々。

 偉人伝を読むと、多くの場合失敗や困難を乗り越えての成功談だから、わくわくどきどきしながらも安心して読むことができる。

3.個人的な経験から偉人伝の例を何人か挙げれば、

  外国人としては、

  哲学者:ソクラテス
  文学者:シェークスピア
  音楽家:バッハ、モーツアルトベートーヴェン
  画家:レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロラファエロ
  スポーツ選手:ベーブ・ルース
  科学者:ガリレオニュートンキュリー夫人アインシュタイン
  医師:シュヴァイツアー、
     など。
  
  日本史上の人物としては、信長、秀吉、家康など。

 いずれも評価が定まった人物の伝記だから、多少美化されたとしても抵抗なく受け入れられる。同じ一人の人間としてそんなに活躍した者がいたのかと思うと勇気がわいてくる。

 もっとも時々偉人だったかどうか再評価がなされる例もないではない。
 野口英世などがその一つだろう。大きな功績とともに重大な欠点が指摘されるに至っている。

4.これまでにさまざまな分野でさまざまな発表がなされてきており、人類の知の蓄積は膨大な量に達している。それぞれに有用であり、価値があると言えると思うが、人間が真の意味で理解し受け入れ感動できる情報の形は、人間が登場して思考し行動する文学のかたちが最強であり、抽象的な学術書では届きえない人間の心を揺さぶることができると言えると思う。

 だれを偉人と考えるかは、人それぞれでよいと思うが、偉人と言える人間がいかに生きたのかをたどることにより、自分が生きていくうえでの前向きな気持ちやヒントを得られればいいと思う。

 それが、偉人伝の効用ということだと思う。