南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『結婚について』(価Ⅲ=48)

     
             『結婚について』(価Ⅲ=48)

                  
                                          価値観の研究第三部 その48


1. 最近、結婚しないひとが増えていると言われる。統計的な数字もあるが、たしかに、自分の身の回りでも、娘が結婚しないで家にいるという話はよく耳にする。どうしてなのだろうか?

2. ひとそれぞれの事情があるだろうから、一概にこうだとは言い切れないと思うが、一応考えられる理由を挙げれば、

① 経済的に自立しているので気の進まない結婚はしなくてもいい。
② 結婚しないことへの社会的なプレッシャーが従来より弱まった。
③ 仕事が忙しく結婚する余裕がない。
④ 昔のようなお見合いの制度がなくなって、相手を見つける機会が減った。
⑤ 自由恋愛から結婚にこぎつけるのが一般化しているが、恋愛に対する考え方や、セックスのとらえ方や、恋愛への積極性の程度等にばらつきがある。
⑥ 仕事以外の生活にも楽しみの選択肢が増えて結婚への切実な欲求が小さくなった。
⑦ 低所得や不安定な職業についている者が多く、結婚生活が成り立ちにくい。
⑧ 社会的な風潮として、恋愛や結婚にがつがつしたくないという者がふえた。(いわゆる草食系)
⑨ 結婚にしばられたくないという自由志向の者がふえている。

などが考えられる。

3. 人口減が懸念されており、出生率を高めるべきだという指摘もあり、そのためには恋愛のきっかけづくりの支援や結婚促進策などの公的な施策も講じられつつあるが、結婚は本来当事者の自由意思で決められるべきものであって、外的な誘導というのはいかがなものであろうか?
それはともかく、結婚は法的な位置づけも厳然としてある。
民法でも、婚姻に関する規定があり、税金や社会保険など公的な制度は結婚したカップルを法的に特別な関係ととらえている。子供の取扱いについてもまた、嫡出子とか非嫡出子というように婚姻関係にあるかないかで差を設けている。
最近、婚姻届が出されていなくても、事実上婚姻関係と同様な関係にあるカップルについて、婚姻関係に準じた取り扱いをしようとする流れもあるようだが、社会の変化と法的な対応はこれまでも常に後追い処置であり、妥協の産物であってきたので、これからもそのような推移が予想される。先進国では、婚姻届の有無に関係なしに、公的な取扱いに差を設けていない国もあるようだが、日本はなかなかそうはならないような気がする。

4. 結婚は、多くの人の人生にとって最重要事であると言えるだろう。
できれば、いい相手と出会い、結婚し、子供をもうけ、末永く結婚生活を続けられるのが幸せだと言えるだろう。
その意味で、結婚について、冷静に考え学ぶ機会があってしかるべきだろう。
多くのひとびとはこれまで、自分の力に加えて、いろいろなひとの支援を受けながら、良縁を見つけてきた。これからも、自力に加えて、社会的にバックアップする仕組みが整備されることは有意義だと思う。
結婚相談所とか出会いサイトとか出会いを促進する場はあるにはあるが、もっと効果的な仕組みや基礎的な情報を提供する仕組みがあってもいいような気がする。
人間はだれでも一組の男女から生まれるという基本を忘れずに、結婚を考えたいものだと思う。