南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

医師の役割(価Ⅱ=27)

 病気について、一般人は、患者にしかなれない。病気と治癒と半病と後遺症と障害と苦痛と昏睡と死と。
 しかし、医師は、治療することができる。この差は、天と地ほどの差がある。

 医師は、患者の命をあずかる。握るのである。

 患者は、命永らえるために、医師にすがる。ひれふす。懇願する。崇め奉る。服従する。

 そこに生まれる上下関係、一方的な依存関係は、医師にとっては自尊心を満たすとともに、重圧でもあるだろう。

 医は仁術だが、医師もまた、生身の人間であり、患者にもなりうる弱いひとりの人間である。

 全力で治療に当たろうとしても、時間的体力的気力的限界がある。

 そこに問題が発生するおそれは常にある。

 やはり、病院側が、すぐれた医師や看護師を確保し、効率のよいシステムを構築し、患者に対して的確な医療サービスを提供することが基本だと思うが、同時に、患者への説明が十分になされることが求められる。時間が限られているなら、なんらかの補足的な方法をもっと充実させるべきであろう。説明書とか参考書とかDVDとか、相談コーナーとか、工夫すればやれないことはない。患者側の費用負担もある程度なら可能だと思う。「この本がいいですよ」と医師が勧めれば、よほど高価なものでない限り買い求めて一生懸命に読むだろう。

 忙しくて大変だとは思うが、やはり、医療の中心は医師である。医師のほうから、さまざまな指示やヒントを与えてくれなければ、患者はうろうろするばかりだと思う。

 医療従事者のみなさまよろしくお願いします!

 ところで、わが主治医ともいうべき医師がくれたペーパーをもとにたわむれに、いやまじめに、短歌形式にまとめてみた「医師の弁明」ともいうべきものがあるので、参考までに載せておきたい。

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       (ある医者の弁明)

   
   診察は すぐに済むけど 準備して 責任もって 診断してる

   たくさんの 患者を診れば 時間ない 結論先に 伝えているよ

   いのちには かかわらないこと 後回し 深刻ならば きっと処置する

   まず検査 それから診断 運悪く 病気があれば 治療しますよ

   限られた 時間の中で 精一杯 命を救う わたしは医者よ!