南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

アメリカの金融危機=その1

 サブプライムローンに端を発する金融不安は、リーマンブラザーズという巨大証券会社の破綻によって象徴され、その他の巨大銀行、巨大保険会社の破綻が追い討ちをかけたのは周知のとおりである。

 金融先進国アメリカでのかくも巨額の金融破たんは、まさに青天の霹靂以外のものではなかっただろう。一部の有識者はこの成り行きを予測できていたのかもしれないが。

 いまやアメリカは軍事、政治、経済などで、ひとりがちの状況にある。
 アメリカの自業自得だ、と言って見捨てるわけにはいかないのである。

 紆余曲折の末、アメリカの金融安定化法案も成立した。
 これはいくつかの救済策のパッケージのようだが、眼目は、政府による不良債権の買取だろう。

 国の金を使って救済するという点では、日本がかつてバブルがはじけたときに、救済策のひとつとして金融機関に公的資本を注入したのと類似の手法だと思う。規模はちがうが。

 問題は、これによってどの程度、金融不安は解消されるかだ。だれも確信はもてないだろう。
 日本サイドでは、公的資本の注入もすべきだという提案をすることを考えているらしい。

 要は、世界各国が、協力し合って、吸収できる規模であるかどうかがポイントだろう。

 IMFによれば、世界全体のGDPは、約、5,400米ドルだそうだ。

 日本円に換算すると、仮に、1ドル=106円とすれば、約、5,700兆円となる。

 アメリカが今回の救済にあてようとする金額は、約100兆円ぐらいだろうか。

 GDPと比較することが的確かどうかという議論が必要だとは思われるが、仮に、このふたつを比較すれば、なんとかならない数字ではないような気もする。

 とすれば、世界各国(反米国は無理だろうが)が協力してアメリカを助ければ、最悪の事態を防ぐことはできるかもしれない。

 アメリカが助かれば、世界も助かるし、日本も助かる。それが今の世界の経済構造だろう。

 ということで、感情論を別とすれば、数字的には、対応不可能な規模ではないと思われる。

 それぞれの国が痛みをわかちあう以上、アメリカが原因国として最大の痛みを感じつつ、不安解消の努力をすべきであることは言うまでもない。

 これから、アメリカでは大統領選挙が行われる。日本もまた総選挙をひかえている。

 政治日程が立て込み、流動的な状況の中で、的確な対応が期待される。

 他人事ではないだけに、今後の推移を注意深く見守りたい。

なお、金融危機の影響や推移を把握するためには、GDP以外にも、国別の予算規模、国債発行金額及び残高、金融機関別貸付可能枠及び残高、金利、株価、通貨相場、経済成長率、投資動向、貿易額、消費者物価、失業率、国民一人当たり年間所得等の指標を世界全体、アメリカさらには先進国グループ、そしてもちろん日本という分け方で整理し分析しておくことが求められる。

 当然、財政、経済や金融の専門家の方々がそうした作業はしてくれていると思うが、それらをもとに的確な対応がとられることが望まれる。
 
 いわゆる「実体経済」への影響が出てくれば、国民の日常生活つまり衣食住をもろに襲うことになるから、それへの影響を最小限に食い止めてほしいわけである。

 大きな金融危機だけに、回復のためには相当の努力と運と時間が必要となるだろう。

 恐慌にでもなれば、全世界が悲惨な状況に追い込まれるおそれがあるのだから、全員参加で対処していかなければならないだろう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ウィキペディアによる統計】

国の国内総生産順リスト(MER)上位10位。2008年のIMFのレポートによると、日本は世界のGDPの約8~9%を占める。

順位 国名 2007年(確定値)

― 世界 54311.61
欧州連合 16830.10
1 アメリカ合衆国 13843.83
2 日本 4383.76
3 ドイツ 3322.15
4 中華人民共和国 3250.83
5 フランス 2560.26
6 イギリス 2772.57
7 イタリア 2104.67
8 ロシア 1289.58
9 スペイン 1438.96
10 ブラジル 1313.59