『ベートーヴェン後期のソナタとリストの小品たち』(山本百合子。朝日カルチャーセンター。平成20年11月22日)(感想)
山本百合子というピアニストははじめてだったが、とても誠実で真剣で研究熱心なところに好感を持った。
かんたんなレクチャーと演奏という構成だった。
ベートーヴェンとリストの共通点は、女性への恋心とピアノという楽器の発達への貢献だったという、おもしろい見方を示した。
そして、ベートーヴェンは、ピアノソナタ30番と31番。いずれも、自由で伸びやかで抒情性もあって、魅力的な曲だが、ため息をつきながら心をこめて演奏するようすに思わず引き込まれた。
リストは、当時の貴族のご婦人方にたいそう持てたそうで、リストが現れると失神する場合もあったらしい。超絶技巧にくわえて、聴衆へのサービス精神が豊かだったのだろう。
リストの曲目は、以下のとおり。
・ 二つの伝説・・・小鳥に語るアッシジの聖フランシス
海の上を渡るパウロの聖フランシス
・ 愛の夢
・ ため息
・ ラ・カンパネラ
山本百合子というピアニストは、おそらく「恋心」をたいせつにして、音楽を解釈し、演奏するタイプの女性だと思われた。それだけに、両手が頻繁に交錯するような派手なリストの作品を着実に弾きこなしたと感じられた。
演奏だけを聴く場合に比べて、演奏者の話や声が聞けて一味違う楽しみを感じさせてくれたレクチャーコンサートだった。