南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

小歌集『光る秋』

    
    小歌集『光る秋』



      (ひかり)


限りある いのちは光 目の中に 動きの先に 涙とともに

逝きてなお こころに灯る 光あり ぬばたまの闇 照らすいのちの

ただひとり 別れも告げず 去るひとの 背中は透けて 声も届かず


     (とらわれびと)


危うさの 何かに気づく 今ここの 捕われびとは 誰とも知れず

 
     (秋冷)


ジャケットを ひっかけて来る 群衆の 小雨の中を ワイシャツで行く

とにかくも 命ながらえ 行く日々の こここのときに すがるものとは

見かけより 危ういガラス 心身の 構造機能 だれが管理す


     (花くたす)


花くたす 時の歩みに 耐えかねて 揺らぐ葉陰に 枯れ果つる枝


     (片恋)


片恋の こころ静かに 成熟の 道行き遠く 秋の日は落つ

かりそめの 恋の想いは 過ぎ去りて 朝日まぶしく 手をかざす時

恋情の 赴くままに かき抱く ひとは異国に 旅立ちしまま

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