南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『 自殺について 』(価Ⅲ=16)

 

          『 自殺について 』

                                価値観の研究第三部 その16

1.死を恐れる人間の多い中で、自ら命を絶つ人間もいる。
 最近の日本でみれば、毎年約3万人の自殺者がいるという。痛ましいことだ。
  その原因は、病苦、借金苦といった割合が多いらしい。追い詰められて、苦しみに耐えられなくなって、死を選ぶとう場合が多いのだろう。

2.ひとりの人間の中でも、生きたいという欲求と死にたいという欲求が共存しているケースもあるように思う。揺れ動く心理状態の中で、精神状態がきわめて悪い方に振れたときに、逃げ場がなくなって死を選ぶのだろうか?

3.自殺を予防しようとする取り組みも公的機関などで行われているようだが、カウンセリングとか薬の投与とかをはじめ、医師やカウンセラーなどの専門家による判断のもとに、家族や友人や知人や同僚が自殺防止に協力するというかたちが有力な方法のひとつではないだろうか?

4.宗教によっては自殺を禁止しているものもある。そういう掟を破って自殺すれば本人も宗教的に不利な扱いを受けるだろうし、遺族もつらい目に遭うかもしれない。宗教とまで行かなくても、一般的な社会的関係の中でも、自殺した者の遺族などは他人から特殊な目で見られるということがある。一人の人間の死が死後にまでさまざまな影響を及ぼす例である。
 では、そういう悪影響を及ぼすことを考慮して自殺を思いとどまれるだろうか?おそらく答えは否だろう。どうしようもなくなっての自殺という場合が多いのではないだろうか?

5.神風特攻隊は強制されての行為だっただろうが、最近のテロリストには宗教や社会的使命感によって自爆テロをする例もあるように見える。

 自殺の一形態ではあるが、上に述べたケースと性質がだいぶ異なると言えるだろう。

 人間の死もまた複雑怪奇なものの最たるものであることは言を俟たないだろう。