南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『 ホスピスなど 』(価Ⅲ=17)

 

       『 ホスピスなど 』

                                価値観の研究第三部 その17


1.死への道筋がさまざまであって、多くの人間が老いや病気や事故等により介護が必要な状況に追い込まれる時代状況の中で、人間が尊厳ある死を迎えられるようにすることは社会的に重要なことだろう。

 医療や介護の体制の整備が求められる。

 病気になれば病院で治療を受けるが、治療が済めば退院せざるを得なくなり、自宅に戻るかどこかの施設に入居する必要が生じる。

 特に、体に不自由があって自立できない人間にとってだれかの支援を受けらるかどうかは文字通り死活問題である。家族がいればある程度のサポートが期待できるが、身寄りがない者の場合は、システムにすがるしかない。しかも、収入が乏しい者である場合は、生き延びる手立ても限られて来るだろう。老後の蓄えや年金やなんらかの収入があればよいが、そうでない場合は生活費を工面することがきわめて難しいい試練となるだろう。

 お金に余裕がある人間の場合でさえも、民間の有料老人ホームなどお金でサービスを得られる場合はよいが、がんや呼吸器系の病気など施設が受け入れを拒否する場合もあるだろう。

 そうした場合は、なんらかの支援体制がなければ生き延びていけないことになる。

 自宅にいて、24時間ヘルパ^-などに介護を受けるといようなサービスが必要となる場合があるが、収入も貯金もない人間にたいしてはどのように取り扱ってくれるのだろうか?

 
2.末期がんの患者を受け入れるホスピスの存在が知られているが、今後ますますその重要性は増してくると考えられる。

 単なるボランティアではなく、医療介護体制の中できちんと位置付けていく必要があると思う。

 今、医療介護制度については、財政問題、患者の負担割合、従事者の資格や待遇など困難な問題が山積しているが、少子高齢化時代を迎えて、その重要性はますます大きくなっている。

 死へのステップを尊厳あるものとするのが人間社会の責務であると思う。みんなで知恵を出し、力を合わせて解決の方向を見出していくことが望まれる。