南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

金田一京助

 金田一京助著「日本語の変遷」(講談社学術文庫)を興味深く読んだ。

この著作自体は戦中戦後にかけて著されたものだが、今日なお示唆に富む内容となっていると感じた。

日本語の変遷と語学的な特徴を分析したものだ。

まず、日本語を、第一期 上代日本語奈良時代および奈良時代以前

        第二期 古代日本語もしくは古典日本語=平安時代のおよそ400年

        第三期 中世日本語=鎌倉・室町時代のおよそ500年弱

        第四期 近代日本語=江戸時代の訳300年

        第五期 現代日本語=明治・大正・昭和の時代

  の五期にわけて、それぞれの期の言語的な特記事項を述べている。

  きわめてかんたんに言えば、

  ・日本語は、ほかに類似の言語があまりない。
  ・文法は昔からほとんど変わっていない。語彙はかわるけれども。
  ・発音は、母音や子音の数が少ない。単母音化の傾向がある。
  ・助詞・助動詞のおびただしい発達
  ・敬語の著しい発達
   
    といった指摘がなされている。

  面白いのは、言葉は、社会的な存在であり、どんどん変わっていく。新しい表現や言葉も生まれるが、長き間には淘汰されていいものが残る。だから、次々に新しい表現が出てきても眼の敵にする必要はないのだという趣旨のことを述べている。

 日本語をはじめアイヌ語その他古今東西の言語を学んだ金田一京助の自信がうかがわれて面白い。

 ちなみに、その子息が、金田一春彦である。

 親子で言語学者としてすぐれた業績をあげているのはすばらしいことだと思う。

 文学をやるもののはしくれとして、日本語の変遷についてもまだまだ学ぶべきものがあると感じた次第である。