小池昌代は、今ぼくが一番興味を持っている女性詩人だ。
現実をよく観察して、大胆にして細心の言葉遣いをする。すぐれた詩人だ。
最近、小説でも大きな賞を受賞して脚光を浴びている。
そのうち、「裁縫師」という短編を読んだ。
いま64歳の掃除のおばさんが、9歳のときに経験した性のめざめみたいなものを回想するといった話だ。
9歳の少女が、母に連れられて、服を作ってもらいに、ある裁縫師のところへ行く。そのときに、男の裁縫師に抱かれてキスされるというストーリーだ。少女が、挑発したのかどうか?9歳の少女にすでに心身の性的な発育が認められたのか?なぞめいたまま、話は終わる。
小池昌代は、一度だけあいさつ程度に会ったことがあるが、実物もとてもきれいでさわやかで感じのいい女性である。
そのときには、それほど、思い切って「エロティシズム」をテーマに小説を書くということは知らなかったし、そういう予感もなかった。
しかし、こうして、小説を読んでみると、意外に小池昌代がそういうことにこだわりがあることに
気づいてすこし驚く。当たり前といえば当たり前だが、人間の内面をきっちり描ける力量に感心した。
これからますます多忙な執筆生活にはいるとは思うが、詩も小説もさらにはそのほかのジャンルでも大いに活躍することを願っている。