南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

芸術評論

『 加山又造展を見て 』

『 加山又造展を見て 』 昨日(平成21年2月28日)、国立新美術館に、加山又造展を見に行った。 思えば、40年ほど前、新潮社の詩人全集のひとつ「萩原朔太郎」の表紙に加山又造による装画を見出して、強く惹かれるものを感じて以来、テレビや書物など…

倉田良成の職人芸

『 倉田良成 の 職人芸 』 1.SNSの効用 ミクシィに代表されるSNS(ソーシャルネットワークサービス)は、さまざまな功罪があるにせよ、使い方によってはとても役に立つと思う。 小生も、いくつかのSNSを利用させてもらっているが、そのひとつに、…

「ベートーヴェンの後期のソナタとリストの小品たち」(山本百合子)

『ベートーヴェン後期のソナタとリストの小品たち』(山本百合子。朝日カルチャーセンター。平成20年11月22日)(感想) 山本百合子というピアニストははじめてだったが、とても誠実で真剣で研究熱心なところに好感を持った。 かんたんなレクチャーと…

南紫音 ヴァイオリン・コンサート(2008年11月15日 紀尾井ホール)

【 南紫音 ヴァイオリン・コンサート(2008年11月15日 紀尾井ホール)を聴いて 】 昨夕、南 紫音(みなみ・しおん)のヴァイオリン・コンサートを聴いた。 1989年北九州市生まれというから、まだ19歳。将来が楽しみな若手ヴァイオリニストであ…

「指田 一展」を見て(感想)

「指田 一展」(2008.11.3-11.8、於 東京銀座 ギャラリーGK)を見て 指田 一(敬称略)が制作したオブジェは、詩誌「SPACE」の表紙で何度も見たことがあった。 今回、指田 一から、個展への案内のはがきをもらったので、本日(最終日)…

「大琳派展」を見て

「大琳派展」-継承と変奏―(2008年10月7日~11月16日、東京国立博物館)を見て(感想) 1.はじめに 「大琳派展」は、尾形光琳生誕350年を記念した展覧会だそうだ。 第1章 本阿弥光悦・俵屋宗達 第2章 尾形光琳・尾形乾山 第3章 光琳意匠と光琳顕彰 第4…

アンスネス ピアノ・リサイタル

【アンスネス ピアノ・リサイタル (平成20年10月27日東京オペラシティ)】 1970年ノルウェー生まれの、レイフ・オヴェ・アンスネスは、日本でもその実力が高く評価されていると思う。昨日の、ピアノ・リサイタルも、盛況で、万雷の拍手に応えて、アンコ…

特別展「源氏物語の1000年ーあこがれの王朝ロマンー」を見て

【特別展「源氏物語の1000年-あこがれの王朝ロマン―」(横浜美術館。平成20年8月30日―11月3日】 今年が源氏物語1000年紀にあたるということで、開催された特別展。 「紫式部日記」には、当時、源氏物語が広く読まれているという記述があり、それがちょうど1…

ペーター・レーゼル べートーヴェン ピアノソナタ演奏会

『ペーター・レーゼル ベートーヴェン ピアノソナタ演奏会』 1.平成20年9月20日、紀尾井ホールで、ペーター・レーゼルのピアノリサイタルを聴いた。 ベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会の第一回目。 20番、17番(テンペスト)、29番(ハン…

「フェルメール展」を見て

「フェルメール展」を見て 今回、東京都美術館で開催中の「フェルメール展」(2008.8.2~12.14)を見た。 世界に30数点現存するといわれるフェルメールの絵のうちの7点が今回の展覧会に出展されている。 最近の「フェルメール」への賞賛の嵐…

現代詩歌と古語

詩は長く書いてきたせいか、言葉の使い方には、ある程度見当がつくような気がする。 しかし、こと短歌や俳句になるととたんに自信がなくなる。 ぼくは、「現代語を使って現代人の感情を表現したい」という目標があるからだ。 短歌と俳句は、いずれも古語や古…

夏目漱石「文学論」に見る漱石の「決断力」

【 夏目漱石「文学論」の「序」に見る決断力 】 夏目漱石の「文学論」の「序」は、漱石の率直な息遣いがうかがえて実におもしろい。 いくつかのポイントを列挙してみよう。 1. 明治33年、第五高等学校の教授時代に、希望したわけではないのに、校長と教…

夏目漱石「文学論」に見る「美醜論」

夏目漱石の「文学論」を見ていたら、「連想の作用にて醜を化して美となすの表出法」という項が目に付いた。 漱石といえば、小説はあまりにも有名だが、「文学論」を読んだことがある者はすくないのではないだろうか? 天下の漱石がどんなことを言っていたの…

詩について思うこと(その2)

「詩について思うこと」の続きである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 六.詩はだれのものか 一般に商品は消費者に購入されてはじめて、その目的を達成します。商品の場合は、生産者がその技…

詩について思うこと(その1)

「詩界」(No.251)(平成19年9月日本詩人クラブ発行)に発表した、エッセイ「詩について思うこと」を転載する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 詩について思うこと 南原 充士 一. はじめに…

クレーメルとツィンメルマンのデュオ

昨日、サントリーホールで、クレーメルとツィンメルマンのコンサートを聴いた。 ブラームスのバイオリンソナタ、一番から三番まで。 あまりのプログラムのよさに行く前から、期待で胸がふくらんだ。 クレーメルはぼくが愛してやまないバイオリン奏者である。…

マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル

昨日(H19年11月4日)、すみだトリフォニーホールで行われたピリスのピアノリサイタルを聴いた。 曲目は、 ヒナステラ 3つのアルゼンチンの踊り D.スカルラッティ ピアノ・ソナタ イ長調 K.208 シューベルト ピアノ・ソナタ 第13番 シューベ…

若き巨匠、ティーレマン!

本日(H19年11月3日)、サントリーホールで、クリスティアン・ティーレマン指揮によるミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートが開かれた。 演目は、 R・シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」 R・シュトラスス 交響詩「死と変容」 ブラー…

『トリスタンとイゾルデ』(バレンボイム指揮)

昨日(平成19年10月14日NHKホール)、ベルリン国立歌劇場オペラ「トリスタンとイゾルデ」を観た。 ワーグナー作曲。台本もワーグナー。 指揮、ダニエル・バレンボイム。演出、ハリー・クプファー。 3幕、4時間に及ぶ大作。 結論的には、完璧な出来だった…

南川優子の詩を読む(その5)

南川優子のホームページ「そふと」から、「窓拭き」を引用する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 窓拭き Ⅰ ゴンドラに乗って 十階建てビルの 窓拭きをしていると 地上から管理人が お前はどう…

南川優子の詩を読む(その4)

南川優子のホームページ「そふと」から、「光」を引用。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 光 昨日 ミシンをかけている間 太陽の寿命が尽きた 縫い目は 途切れた線路のように 行き先を失い 窓が…

南川優子の詩を読む(その3)

南川優子のホームページ「そふと」から、「ページ」を引用する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ページ 嵐の晩 窓辺で本を読む 爪のような雨が ガラスを割り 水が 顔を打つ わたしは 本の…

南川優子の詩を読む(その2)

南川優子のホームページから、「テーブルクロス」を紹介したい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー テーブルクロス あなたを思いながら 庭を眺めるダイニングルームで 洗いたての 白いテーブ…

谷川俊太郎の「絵七日」(すばる10月号)を読む!

いまさら谷川俊太郎でもないだろうという思いもあるが、やはり、最近の充実ぶりを見ると、やっぱり谷川俊太郎だなあという思いを禁じえない。 70歳を過ぎてなお進化しつづけているというのはたいへんなことだ。 おそらく、生きる姿勢がしっかりしているの…

南川優子の詩を読む(その1)

南川優子の詩に出会ったのは、まだ最近のことだ。(敬称略、以下同じ。) 清水鱗造が主宰している「灰皿町」というホームページに参加させてもらってから、灰皿町の住民の詩やエッセイや日記などを読むうちに、いたくぼくの心をとらえる詩に出会った。それが…

平山郁夫展

東京国立近代美術館で開催中の「平山郁夫展」を見た。 やはり、展示内容は期待に違わぬ充実したものだった。 全部で83点。四つのパートにわかれていた。 第一章 仏陀への憧憬 第二章 玄奘三蔵の道と仏教東漸 第三章 シルクロード 第四章 平和への祈り 19…

現代詩手帖9月号について(感想)

「現代詩手帖9月号」に掲載されている詩作品についての読後感、以下のとおりである。 いずれの詩作品も甲乙つけがたい力作だが、あえてぼくが特に惹かれた作品を数編取り上げてみたい。 まず、辻井喬の「今日という日」は、外国のスパイ小説を読むようなお…

愛の鞭

鈴木志郎康さんのブログを見ていたら、詩の批評の場が少ないことを指摘し、コミュニケーションの回路をつくる必要性を強調されていた。 ぼくも詩を書き、読むということを長くしてきたが、「詩の批評の貧困」ということについて、長らく問題だと感じてきたの…

キャラメルボックス公演「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」

本日、池袋のサンシャイン劇場で催された演劇集団キャラメルボックスの公演「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」を見た。 ストーリーは、奇抜である。 くわしいことは、これから見る方もいるので、さしひかえたいが、家族愛を描くために、あえて、死者を何人も…

河原泰則・コントラバス

一昨日、浜離宮朝日ホールで開かれた、河原泰則のコントラバスのコンサートに行った。 河原は、一橋大学と桐朋学園大学の両方を卒業してから、ドイツのベルリン大学に留学。 コントラバス奏者として認められ、1980年以降、ケルン放送交響楽団首席コント…