南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2007-01-01から1年間の記事一覧

憲法改正問題(価値観の研究=その26)

わが国にとっていま最も重要で難しい問題のひとつが憲法改正問題であることは異論がないだろう。 賛否両論がある。無関心なひともいるかもしれない。 賛成派の論拠は、「敗戦直後ならともかく、戦後60数年経った今日、独立国として、自国の防衛を自国の軍隊…

言葉と行動(価値観の研究=その25)

昨日のイベントでの谷川俊太郎の発言に、「言葉は現実のほんの一部しか表現できない。言葉は不完全なものだ。現実は複雑で矛盾に満ちたものだ。言葉より行動を重視すべきだ。」という趣旨のことがあった。 昔から「不言実行」とか「有言実行」とか「言行不一…

同性愛者の問題(価値観の研究=その24)

アメリカの軍隊の話し。 アメリカにはけっこう同性愛者が多いらしい。 米軍では、The "don't ask、don't tell" policy(「聞かない、話さない」政策)というのがあって、 うやむやにするこどによって、同性愛者でも軍人として勤務できるようにしている。 と…

谷川俊太郎「詩を読み、語る」(聞き手*小池昌代)

きょう、「立教大学文学部100周年記念行事」のひとつとして、同大学タッカーホールで開催された、「谷川俊太郎『詩を読み、語る』」というイベントに行った。聞き手は、同大文学科文芸・思想専修特任教授、小池昌代(敬称略)だった。 大きなホールには、…

小池昌代の小説

小池昌代は、今ぼくが一番興味を持っている女性詩人だ。 現実をよく観察して、大胆にして細心の言葉遣いをする。すぐれた詩人だ。 最近、小説でも大きな賞を受賞して脚光を浴びている。 そのうち、「裁縫師」という短編を読んだ。 いま64歳の掃除のおばさん…

屠殺場めぐり

たまたま本屋で見かけた本。ある女性のイラストルポライターの著書。 世界何カ国かの屠殺場レポートだ。イラスト入りでリアルに屠殺場のようすや、解体のプロセスが描かれている。牛や馬や豚など。食肉としてはなじんでいても、屠場にはなじみがない。 人間…

利害関係(価値観の研究=その23)

人間が「言うこと」と「行うこと」の間に食い違いが生じる一番大きな理由は、利害関係だろう。 いま、ドイツのハイリゲンダムでサミットが開催されているが、「各国首脳の発言をどう受け止めたらいいか?」を考えるときには、国益が基本にあると思ってよい。…

科学的な解釈は可能か?(価値観の研究ーその22)

これまで、「価値観」についていろいろ述べてきたが、なぜそんなことをくどくど書いているかというと、「自分」をできるだけ正確に知りたいからだ。 だれしも、自分の与えられた環境に、意識するしないにかかわらず、制約をうけている。 なぜ、自分はこのよ…

香水

先日、あるハーブ園に行った。バラやラベンダーやセージやペパーミントやスペアミントなどいろいろな花やハーブが植えてあり、陳列されてあって、見ごたえ十分だった。 その一角に、香水の歴史を解説したコーナーがあった。香水の材料や製法、香水ビンの移り…

野党の役割(価値観の研究=その21)

年金法案が衆議院の本会議で強行採決されたニュースがテレビや新聞のトップニュースとなっている。 与野党の対立。議場でもみあう与野党の議員たち。怒号がとびかう。 これを見ると、なんだか与野党は戦争をしているように見えるかもしれない。 しかし、今の…

松嶋奈々子論

陣内智則と藤原紀香の披露宴は昨日執り行われたそうだ。 紀香の好きな歌をピアノの弾き語りで歌い、新婦を感涙の涙にむせばせたそうだ。 なかなかいいカップルだ。お幸せに! ところで、ぼくのお気に入りの女優ナンバーワンは、松嶋奈々子だ。 実際は知らな…

藤原紀香論

藤原紀香といえば、お笑いの陣内氏と結婚したことが話題となった。最近、本も出したようだ。「紀香魂」というタイトルの。中身はまだ読んでいないが、結婚までには紆余曲折があって、ストレスで円形脱毛症になったことまで書かれているらしい。 それはともか…

戦死したティルマンの場合(価値観の研究=その20)

パット・ティルマンはアメリカのフットボールのスター選手だった。 彼は、2004年アフガニスタンでの戦闘中に仲間の銃弾によって戦死した。 彼の死について調査したある中佐が、 「もし人が無神論者で、何の信仰ももたないとしたら、死んでも行くところが…

情報の自動仕分け機能(価値観の研究=その19)

情報をまじめの取り入れようとすると、情報の洪水にはまっておぼれる危険がある。 そこで、人間は、たぶん、無意識に必要な情報、関係のある情報、興味を持てる情報だけを仕分けしてとりいれ、その他の情報は無視して捨て去るという作業をしていると思う。 …

ダニエル・バレンボイム(ふたたび)

昨夜、NHKハイビジョンで、ダニエル・バレンボイムの、ベートーベンのピアノノナタ連続演奏会(2005年6,7月ベルリン国立歌劇場で開催)のもようを観た。第7回と第8回。16番、14番、6番、21番。9番、4番、22番、32番。毎回4曲ずつで、…

タブー(価値観の研究=その18)

言論の自由、精神の自由は重要だ。偏見のない覚めた観察眼と客観的な判断力が求められる。 しかし、忘れてはならないのは、人間が科学的であろうとすればするほど、狂気に近づくおそれがあるということだ。 歴史に教訓を見出そう。 過去の宗教の多くが、現世…

情報の洪水(価値観の研究=その17)

たった一日分の新聞に載っている情報量でもめっちゃ多いのに驚く。 政治、国会の動き、経済、社会、外交、国際、スポーツ、芸術、文化、芸能、テレビラジオ番組、出来事、事件事故、スキャンダル、トピック、エピソード、囲碁将棋、お知らせ、連載小説、広報…

建前と本音(価値観の研究=その16)

「価値観の体系」を構築しても、すべてを思うまま表現できるわけではないのが現実だ。 言論の自由ほどたいせつな権利はないと思うが、言論によって、トラブルを引き起こす恐れがあるのも事実だ。 たとえば、名誉毀損にあたりそうなことを書いたり言ったりす…

社会批判の視点(価値観の研究=その15)

世の中には、むかしから、賞賛もあれば批判もあり、風刺や皮肉や揶揄もあった。 庶民が、不満を言う方法はいろいろあったが、時代によって、言論の自由の程度が異なるから、 その言い方も変化にとんでいる。 では、庶民を代表するつもりで、いろいろ批判的な…

ダニエル・バレンボイム

最近、NHKのハイビジョンで、不定期ながら、バレンボイムによるベートーベンのピアノソナタ全曲演奏会のもようが、放映されている。まだ生演奏は聴いたことがないので、最終的な評価はさしひかえたいが、これまで、6回にわたる放映を見た感じでは、傑出した…

立場(価値観の研究=その14)

価値観の体系を構築するときに忘れてはならないのが、立場という観点だ。 たとえば、今の世の中のことについて批判するとしよう。 批判はどんな立場からするのか?は重要なポイントだ。 憲法改正はわが国の将来にかかわる重要問題だろう。 これについて、防…

団塊の世代(価値観の研究=その13)

藤原伊織氏も団塊の世代、全闘共世代に属していた。 一口に団塊の世代といっても何百万人もいる。 ひとくくりにすることには無理がある。 しかし、「どんな特色があったか、またいまあるか?」ということを考えてみることはおもしろいし、意味があることだと…

藤原伊織氏を悼む

昨日、藤原伊織氏がなくなったそうだ。 「シリウスの道」しか読んだことはないが、ストーリーといい、登場人物の描き方といい、ハードタッチで人情味のある文体といい、きわめてすぐれた作家だと感心したことがある。 電通マンとしての経験が小説にも生かさ…

性善説か性悪説か?(価値観の研究=その12)

性善説を信じたいが、歴史をふりかえればそんな甘い見方はできない。 では、性悪説が正しいだろうか? 歴史を振り返れば、そうとばかりもいえない。 どうやら、人間は、正邪両面をもっているらしい。 ひとりの人間の中に天使と悪魔が共存する。 皆殺しを命じ…

余談?蛇足?裏話?

[きままな詩歌の森] http://nambara14.exblog.jp/ に発表した詩「無知蒙昧の世過ぎ」に登場する石碑の写真をケイタイで撮ったので載せてみた。写りはよくないかもしれないが、詩の理解を助けることができるかもしれないと思ってあえて載せてみようと思った。…

価値観の要素(価値観の研究=その11)

「価値化の体系」とは、人口に膾炙した言い方をすれば、「思想」とか「世界観」とか「主義」とか「イデオロギー」とか「信条」とか「生き方」とか「理念」とかと言い換えることもできるかもしれない。 だが、それらの用語には一定のニュアンスがつきまとうの…

価値観の形成(価値観の研究=その10)

では具体的に自分なりの価値観をどのように構築していったらいいだろう? 簡単な答えはあるはずもない。 手っ取り早いのは、先人の知恵だ。 すぐれた先人は数多くいる。 それらの先人から学ぶことがひとつの有力な方法だろう。 同じような問いかけをした先人…

紛争の解決(価値観の研究=その9)

価値観の体系が異なれば衝突も起きる。 衝突が起きたときにどう処理するか? これも重要なシステムである。 一番典型的な解決方法は、裁判である。 司法権という権力が基盤となる。 判決が確定すればだれも争えない。 斡旋・仲裁・調停などという手法もある…

価値観の競争(価値観の研究=その8)

では、現実にはどのように物事は決まるのだろうか? 一言で言えば、「価値観の体系」である。 たとえば、政治家は「マニフェスト」+アルファ、経営者は実績、芸術家は作品、スポーツマンは成績、芸能人は人気、一般人はそれなりに。 国のトップがどのように…

科学と思想(価値観の研究=その7)

すぐれた科学者の中には敬虔な信仰者あるいは確固たる思想信条の持ち主である者もいるだろう。 科学的であろうとする者もさまざまな外的な制約や影響を受けざるを得ないだろう。 湯川秀樹は熱烈に平和主義を唱えたようだ。 核兵器につながる発明発見をしてし…